日々

インスタグラムに綴るにはなんかあれ

高速バスにて 往路

田舎行きの高速バスは自由席で 休日である今日は混み合うことが予想されていた 私は隣の席に知らないおっさんとかが座ってくるのは耐えることができないなと 敢えてグレーのサングラスをかけて 隣に座りづらい雰囲気を出していた それゆえか「隣 いいですか?」と声を掛けてきたのは 両耳に4つずつピアスをした背の高い細身の若い男であった 妥当か しかしこの線は不覚だった まあ一見怖い人ではあったが 彼の手提げに入っていた12個入りの萩の月の箱と スマートフォンについた可愛らしいキーホルダーに きっと優しい人なんだなと思った 高速バスはゆるりゆらりと私たちを運ぶ サービスエリアの喫煙所から戻ってきたその彼は ほろ苦くてバニラのように甘い煙をまとっていて それがアノ人が吸っていたそれの香りと同じだったから ふと切なくなって 私は思わず窓の外の茜色の叢雲を眺めたのである