最も俗悪な都市 新潟
坂口安吾のエッセイ 日本文化私観 の冒頭にこんな言葉が綴られている
“ タウトによれば日本に於ける最も俗悪な都市だという新潟市に僕は生れ、彼の蔑み嫌うところの上野から銀座への街、ネオン・サインを僕は愛す。”
俗悪?
坂口安吾といえば、我が母校での大先輩にあたると聞いていたものだから、ひとつは読んでみたいものだと思い、高校生のとき読み始めたものの、いきなりこの文章と衝突する。私は特にこれといって際立った理由はないが、新潟市という街を気に入っているので、“最も俗悪な都市”という言葉にひどく疑念を抱いた。そもそもタウトって誰だ、と。
調べてみれば、ブルーノ・タウトはドイツの建築家で1933年から3年半ほど日本に滞在していたらしい。その時に新潟市を訪れた際に大層な酷評をしていくわけです。何を一番悪くいっていたかというと、悪臭。“ 新潟や 悪臭のなかに 藤咲きぬ ” という俳句を残すほどだったそうで。
そのときに私のおじいちゃんがよく言っていた、昔の新潟市の街中は沢山の堀があって水の都と言われていたんだ、という言葉を思い出した。そうだった。古町や本町へ行けば、今でもその名残が垣間見える場所がいくつかある。この堀は終戦を迎えて10年ほどしてから、悪臭と、それから自動車などの交通の発達を理由に埋められてしまったとかで。
なるほどね、
タウトが評した当時の新潟市は俗悪と言われても致し方ない。
私は、今の新潟市を、タウトに見せてあげたい。俗悪とはに今来てくれたらきっと、“ 新潟や 信濃の水面に 藤咲きぬ ” なんて詠んでくれるでしょう?